デジタル写真のRAW現像は、まず3つのパラメーターだけに絞ってやってみよう
RAW現像を説明している本やネットの記事は、いきなりいろんなものを詰め込みすぎているものが多いので、なるべくシンプルに考えたものを書こうと思いました。
これからRAW現像を始めようと考えている人に向けて、たったこれだけでも写真の仕上がりが大きく変わるということをご説明します。
デジタル一眼カメラがもはや特別なものでなくなってきたので、「RAW現像」という言葉もだいぶ普及してきました。
それでもまだ、イマイチ良くわからない、とっつきにくいと感じられている方も多いと思います。
その原因のひとつは「いじれるパラメーターがとても多い」ことによるものだと思います。
実際に、RAW現像について書いている本などは「RAWで撮ると、こんなにいろんなことができるんですよ!」って感じで書いてありますよね。
それが逆に難しく感じさせてしまっているのではないでしょうか。
ということで、ここでは3つのパラメーターだけで、写真を仕上げていく考え方を説明していきます。
そもそもRAWデータとは
これは既にいろんなところで語られているので、細かくは書きませんが、とりあえずは「JPEGよりも色の情報量が全然多い」ということだけわかっていれば十分だと思います。
例えは、音楽で言うならCDのデータとMP3データ。
MP3は人間に聞こえないと言われている周波数データをカットして圧縮しています。
JPEGも同様で、現在世間で普及しているパソコンモニタで表現できる範囲の色は大体カバーしています。
でもRAWでは、その表現できない部分にデータが隠れていて、それがいわゆるRAW現像したときに役立ってきます。
上の図は元となる画像が明るすぎたので、暗くする修正を加えました。左側がRAWデータを使って修正したもので、右側がJPEGデータから暗くしたものです。
JPEGの方はデータ量が不足していて、暗くしたときに不自然な、くすんだ感じになってしまっています。
また、ちょっとわかりにくいですが、RAWの方は左上の空の青が残っています。
このように、RAWは撮影のあとで修正を加えても、画質が劣化しにくいという特徴があります。
RAW現像のメリット
では、修正できると何が良いのか?
それは、目の前の被写体を撮ることに集中できる、ということを強くお伝えしたいです。
写真を撮るときにもカメラの設定項目がいろいろあります。
それに気を取られて、肝心の被写体を撮ることをおろそかにしてしまってはもったいないです。
特に、ピント合わせと手振れはあとから修正することはできませんので、そこに全神経を使うくらいのつもりでいた方が良いと思います。
RAWで撮っておけばあとで修正できる、ということが撮影時に精神的な余裕が出ます。
RAW現像は芸術作品として仕上げるためだけのものではありません。
RAW現像のデメリット
RAW現像のデメリットは、
- 画像データが大きくなる→メモリーカードやHDDの容量がたくさん必要
- RAW現像をストレスなく進めるためにはPCのパワーが必要
- どんな環境でも画像を見られるようにするには、JPEGへの変換(現像)作業が必要
特に、PCスペックについては5,6年前のパソコンを使っていて、買い換える余裕が無いという方には、RAW現像はあまりおすすめできません。
最近のカメラは画素数も多いので、1枚の写真を処理するのに数分かかってしまっては、たくさん撮ったときにストレスがすごいことになります。
初心者の方がRAW現像するときは、まずこの3つのパラメーターから
前置きが長くなってしまいましたが、初めてRAW現像をするなら、この3つのパラメータをおさえておけば十分、というものをご紹介します。
ここでは、特定の現像ソフトの操作方法とかではなく、RAW現像の考え方、進め方について書いていきます。
ここでご紹介するパラメーターは、どの現像ソフトでもいじれるものです。
修正する際に注意して頂きたいのは、「どういう写真にしたいのか」狙いを明確に持つこと。
写真には基本的に正解、不正解がありません。
極端な話、真っ暗になってしまった写真でも、それが自分の意図したものであれば、それが正解になります。
逆に、狙いが無いまま修正を進めていくと、どこで終わっていいのか分からなくなり、泥沼にはまってしまいます。
ということを、ご理解いただいたうえで、先に進みます。
露出
いわゆる写真全体の明るさについてです。
よく、「ヒストグラムを見てバランスよく」うんぬんが言われますが、まずはその写真で自分が一番伝えたかったものが、適正な明るさになるように調整しましょう。
ホワイトバランス
個人的にはいまだにこの「ホワイトバランス」という表現がしっくりきていませんが、要は「色味」ですね。
ホワイトバランスを調整することは、「色温度」を変更するなんて言われたりもします。
色温度は低い(数値が小さい)と青みがかった感じになり、高い(数値が大きい)と黄色っぽくなります。
よく、「白いものを白く写すために、ホワイトバランスを合わせる」というようなことが言われますが、写真の意図によっては、白いものを白く写したくないときもあります。
例えば、料理の写真なんかは正しくホワイトバランスを合わせると、おいしそうに見えなくなる場合があります。
ですから、あくまで写真の意図に合わせて調整してください。
そうは言っても、最初はよくわからないと思います。
だいたいの現像ソフトにはホワイトバランスをオートで調整してくれたり、シチュエーションごとにプリセットが入っていたりしますので、そこから選んで、気に入らなければ手動で修正する、くらいの感じでいいと思います。
コントラスト
明暗の差の付け方になります。
よく、コントラストが高い写真を硬調、低い写真を軟調という言い方をします。
その呼び方の通り、コントラストを高くすると、ハッキリクッキリ、クリアーな仕上がりになりますが、印象としては硬くなります。
逆にコントラストを低くすると、ややくすんだ感じになりますが、やわらかい仕上がりになるので、人物が主題の時には適していると思います。
一般的にはコントラストが高い写真が好まれるようですが、これも写真の意図によって使い分けられると、より良い写真になります。
実際に3つのパラメーターを修正して現像してみた例
以上の「露出・ホワイトバランス・コントラスト」を修正して、自分の狙い通りの写真に仕上げていきます。
この写真をベースに現像します。
- 露出:カメラの設定がイマイチで、暗くなりすぎてしまったので、バイク全体がもう少し明るくなるようにする
- ホワイトバランス:夕暮れ感を強調するため、色温度を高い側(暖色側)にする
- コントラスト:バイクの機械の質感を出すためにコントラストを上げて、硬い感じを出す
で、現像したものが下の写真です。
だいぶ印象が変わったのが、お分かり頂けると思います。
このように、写真の狙いさえはっきりさせてしまえば、パラメーターはあれもこれもといじらなくても、だいたいは仕上がります。
(もちろん、完成度をどんどん上げていこうとすると、それ相応の知識と技術が必要になってきますが)
各パラメーターで説明した図に書いてあるキーワードをご参考にして頂ければ、なんとなく修正する方向性がわかってくると思います。
長くなってしまいましたが、中身としては「露出・ホワイトバランス・コントラスト」を写真の狙いに合わせていじる、これだけなので、あまり難しく考えずにチャレンジしてみてください。
補足
今回ご紹介した内容ができるようになってくると、またいろいろと物足りなくなってくると思います。
その時におすすめしたいのが、この本です(画像をクリックするとAmazonへ)
この本には、写真の色の本質的なことが書かれているので、非常に勉強になります。
RAW現像ソフトの使い方の本を読んで操作方法がわかっても、どう修正すればより良い写真になるのかはわかりません。
逆に言うと、本質的なことがわかれば、現像ソフトは何を使っても問題無く修正できるようになりますので、さらにステップアップしたくなったときには、ぜひ読んでみてください。