コーヒーの自家焙煎に初挑戦&焙煎度の数値化について検証してみた
コーヒーの自家焙煎で初心者にとって一番難しいのが焙煎度の判定
特別な機材を使わないで焙煎度を数値化できないか検証してみました
焙煎したてのコーヒー豆を売っている、いわゆるロースターで豆を買ってみたら、普通のコーヒーとは全く別物でした。
コーヒーは鮮度が命と聞きますが、まさにその通りですね。
そんなこともあって、前々からコーヒーの自家焙煎をやってみたいと思ってました。
ただ焙煎しましたレポートをしても面白くないので、合わせて「焙煎度の数値化」について検証した途中経過も書きます。
まずはコーヒーについてお勉強
おいしいコーヒーは好きなんですが、特別なこだわりがあるわけでもないので、ハッキリ言ってコーヒーに関する基礎知識がありません。
そこでまずは基本的な全体の知識について、こちらの本で勉強しました。
300ページ近くあってビックリしたんですけど、コーヒーについてまんべんなく書かれてる感じで、入門にはちょうどよかったです。
印象的だったのはペーパードリップの淹れ方について。
私は全然知らなかったんですが、ペーパードリップだけでも5個の方式があるんですってね。
うちでもペーパードリップやるんですが、ドリッパーとフィルターがそれぞれ違う方式のものを組み合わせてました。。。
それはさておき、コーヒーの勉強をしていて感じたのは「コーヒーって理系向きじゃね?」ってこと。
豆の組み合わせとか、焙煎の度合い、豆を挽く細かさなどなど、いろいろ複雑なんだけど、データを積み重ねていって研究すると結果がちゃんと出るような。
と思ったところで、次は焙煎メインの本を読んでみようと思い、こちらの本を注文。
この本が到着してまず驚いたのは、なんとハードカバー。
気合入ってます。
次に目に入ったのが、帯に書いてある言葉。そのまま引用させていただきます。
コーヒーは昔から職人的なカンの世界といわれ、焙煎もその奥の院は厚いヴェールに覆われているのが常だった。
が、こうした神秘主義は何者をも生み出さない。
ものづくりに求められるのは冷徹な論理性であって、論理性を欠いた思わせぶりの技術論など何の役にも立たないからだ。
全く同感です。
もちろんコーヒーについて私は素人ですが、それなりに長いことものづくりの仕事をしていました。
私がコーヒーについて感じたことは、そんなに外れてなかったんですね。
で、この本を読んでいろいろ勉強させていただきました。
コーヒー焙煎の基礎知識
とてもじゃないですが、全ては書けないので、この後に書きます「焙煎度の数値化」の話をするのに必要だと思われることについて書きます。
自家焙煎の方法
ギンナンとか煎る手網にコーヒーの生豆を入れて、ガスコンロの火の上でひたすらユサユサするだけです。
だけなんですが、20分前後ずっとユサユサし続けなければいけないようです。
そこで今回は、数値化検証をするにあたって、ばらつきを抑えるという意味も込めて、こんなものをご用意しました。
形がいびつなのはご容赦ください。
手網を乗せるとこんな感じです。
手が疲れないようにというのと、火からの高さを一定にすることによって安定させる狙いです。
自家焙煎の流れ
コーヒー豆の焙煎は単純に言えば、豆の水分を飛ばしていくという作業です。
ただそれを、どれくらいまで焙煎を進めるか?、いかに豆の中や豆全体を均一に火を入れられるかが非常に難しいっぽいです。
上で挙げた本によると、火にかけて最初の10分はていねいに水分を飛ばす時間らしいです。
10分前後からだんだん豆が茶色っぽい色になってきます。
この色の変化が進んでいって、火にかけ始めから14,5分くらい経つと豆がパチパチ言い出します。
この状態を「1ハゼ」と言います。
そこからさらに火にかけ続けると、一旦パチパチ音は止まります。
さらに数分経つとまた音が鳴り出します。1ハゼの時とはちょっと違う破裂音です。
この状態を「2ハゼ」と言います。
この辺まで来るともう「深煎り」の状態まできています。
あとは焙煎を進めたいところまで火にかけて、最終的には火から降ろし、焙煎が進まないように冷却して終了です。
焙煎度は8段階
先ほどから「焙煎度」という言葉を使っていますが、要はどれだけ火にかけてコンガリさせていくかということです。
この焙煎度は8段階で規定されていて、以下のように呼んでいます。
- ライト
- シナモン
- ミディアム
- ハイ
- シティ
- フルシティ
- フレンチ
- イタリアン
上の方が焙煎が浅く、下に行くほど焙煎が深くなります。
この焙煎度によってコーヒーの味が変わり、焙煎が浅いと酸味が強くなり、焙煎が深いと苦味が強くなります。
この焙煎度の判定こそが、初心者にとって最大の壁だと考えています。
もちろん、ちゃんと狙ったところに煎れるようになるのも難しいですが、そもそも焙煎した出来栄えが、前回やったときにくらべて浅いのか深いのか、を正しく判定できないと狙いの付けようがありません。
上で挙げた本に、さきほどの8段階の豆の写真が載っていましたが、例えばシティとフルシティの見分けなんかまず無理だと思いました。
そこで、初心者の上達のカギは「焙煎度を定量的にあらわすこと」だと考えました。
焙煎度に対する仮説
上の本によれば、焙煎度の判断は色ですると書かれていました。
熟練の人はそれができるんでしょうけど、そこまで精度は高くなくても初心者に判断の付きやすい指標は何かないか?
そこで私が考えたのが、生豆の重量と焙煎後の豆の重量を比較した「重量変化率」
焙煎は生豆に熱を加えて化学変化を起こすことによって、あのコーヒーらしい香りが出てくるそうです。
熱を加えるということは、その間に水分も一緒に飛んでくはず。
もっと言うと、豆に加えられたエネルギーに比例して化学変化も進むし、水分も蒸発するのではないか?
すなわち、焙煎度はコーヒー豆の焙煎前後での重量変化率と相関があるのではないか?
色を判断するのは難しいけど、重さならはかりで計るだけなので簡単。
ということで検証してみました。
検証方法
今回使う豆
“珈琲問屋“というお店で「ブラジルNo.2#18」という豆が激安だったので、これを使いました。
重量変化率
これはいたってシンプルに、焙煎前の生豆の重量と、焙煎後の豆の重量を測定し、以下の式で計算します。
重量変化率 = (焙煎前の重量 – 焙煎後の重量)/ (焙煎前の重量)
焙煎度をどう判定するか?
これが難しいと言っているのにどうやって検証するのか?
今回は少し画像処理をしてみたいと思います。
細かく書くと長くなるので、簡単に流れだけ説明します。
- 焙煎後の豆の写真をRAWで撮る(Nikon D800)
- 写真をデジタル現像する際に、背景の白の台紙が一番明るい白になるように調整し、JPEG化
- その写真をGIMP(PhotoShopの機能が無料で使えるソフト)で読み込んで、豆のRGB値を読み取る(下の図)
- その数値(RGB)をHSL形式に換算し、その明度(L)を焙煎度の指標として利用する
焙煎が深くなるほど黒っぽく、暗くなるので、明度で判断できると考えました。
検証結果(途中経過)
結論から言うと、豆の重量変化率と焙煎度には相関がありそうです。
ただ、データの数も少ないですし、豆も1種類なので、これからもっといろんな条件でやってみる必要があります。
焙煎度の考え方
上のグラフでは縦軸に豆の明度をとっていますが、その明度は8段階の焙煎度で言うとどれに当たるのか?
それを焙煎した時の「1ハゼ」のタイミングから仮定します。
“自家(A)”というのが私の人生初自家焙煎したものです。
こちらは1ハゼが終わってから2分後くらいで焙煎を止めました。
これが例の本によると「ハイ」くらいに当たりそうです。
“自家(B)”はあえて目一杯焙煎して真っ黒にしてみました。
“自家(C)”は1ハゼが終わり切る前に焙煎を止めて、これは「シナモン」くらいにあたりそうです。
ちなみに”プロ”というのは珈琲問屋で焙煎された豆も買ったんですが、そのパッケージに生豆重量と焙煎後重量が書いてあったので、そのデータを使ってグラフにのせました。
グラフ上に3ポイント打ってありますが、これは全く同じ豆を3回数値化の作業したので、これが数値化自体のばらつき幅だと考えてもらえばいいと思います。
補足
これが成り立つ前提は、豆の中まで均一に焙煎されていることだと思います。
表面ばかり火が通って、中に水分が残ってたらわけがわかんなくなっちゃいますので。
今回は焙煎後の豆を何個か割ってみましたが、ちゃんと中まで火が通ってそうでした。
結論と今後
まだまだデータ数が足りないですが、現時点で言えることは、
- 近い条件の生豆同士なら、重量変化率を見ることによって、焙煎の進み具合が判断できる。
(これで判断して「ちょっと焙煎が深くなりすぎちゃったな」と思ったら、いつもより豆を粗めに挽くとか) - この数値化方法だと、焙煎度1段階分のばらつきは出そう。
実はひとつ着目していることがあって、生豆状態での水分量の違いで結果がどう変わるか?ということです。
コーヒー焙煎の難しさは、豆のコンディションが一定じゃないことだと思うので、今後はその辺を重点的に見ていきたいと思います。