中学校の理科でカメラのしくみと写真の「ボケ」を理解しよう
写真を撮るときには設定するパラメータがたくさんあって、呪文のように覚えるのは大変
カメラのしくみがわかれば、各パラメータの意味がイメージしやすくなるかも?
最近のカメラだと、とりあえずオートでシャッターを切れば写真が撮れますが、少し意図を入れて撮りたくなると、自分で設定する必要があります。
例えば、せっかく一眼レフを買ったんだから「ボケ」でうまく表現したい、とか。
ボケを大きくするには絞りを開ける、というのは聞いたことがあるかたも多いと思います。
そのほかにボケを大きくするものとして、焦点距離が長いレンズを使ったり、センサーサイズを大きくしたりとかがあります。
でもそれってどういうこと?というのを中学校の理科で習うことを使って書いていこうと思います。
しくみをわかっていなくても写真は撮れますが、理解しておくとカメラやレンズを買うときに、どういうものを選べば自分のニーズに合うのかもわかりやすくなると思いますので、時間のある方は読んでみてください。
レンズのしくみ
中学校の理科で習ったこの図の関係を覚えているでしょうか?
「倒立実像」だとか「虚像」だとかやりましたね。
これを覚えていることを前提にこの先の話は進めますので、覚えていない方はこちらのページを見て思い出してください。
とつレンズ
(1) 光軸と焦点
とつレンズ…ふちよりも中心の方が厚いレンズ
光軸…とつレンズの中心を通り、レンズの面に垂直な直線
焦点…光軸に平行な光線がとつレンズを通ったあと、光軸上の1点に集まった点。
前後に1つずつある。
焦点距離…レンズの中心から焦点までの距離
簡単に書くと、
- レンズの中心を通る光は直進する
- 焦点を通った光はレンズを通ったあと、光軸に平行に進む
- 光軸に平行にレンズに入ってきた光は、焦点を通る
という法則です。
このレンズのしくみの図を一眼レフカメラに当てはめるとこうなります。
ここでは一眼レフの図にしていますが、どのタイプのカメラでも基本的には同じです。
※説明を簡単にするために凸レンズを1枚で表現していますが、実際には数枚の凸レンズ、凹レンズの組み合わせで、カメラのレンズは構成されています。
ちなみに一眼レフのしくみをFilmingのブログで書いていますので、よろしければ合わせて読んでみてください。
これからフィルムカメラを選ぶにあたって、どのカメラを選ぶのが良いのかのご参考になるように、いくつかの種類のカメラをご紹介します。一眼レフカメラは、デジタルカメラでもかなり普及してきているので、とっつきやすいカメラのタイプではないでしょうか。一眼レフはファインダーから見える画像がそのままフィルムに写ります。なにを当たり前のことを言ってるんだと思われるかもしれませんが、別の記事で紹介する予定の他のタイプのカメラはそうならないので、あえてこう書いています。
なんとなくレンズの焦点距離と写真として記録する撮像センサーの関係がわかったでしょうか?
図1では、青いロウソクにピントが合って、センサー上に写っている状態です。
ボケるとはどういうことか?
では、ボケるということについて図3で説明します。
レンズからの距離が青いロウソクより少し離れた位置に、赤いロウソクを立ててみます。
赤いロウソクから出た光が通る道を赤色の線で書いています。
赤いロウソクはセンサー上で結像しません。
つまり、ピントがずれた状態です。
センサー上で結像はしませんが、赤いロウソクの光は図3のように一定の幅をもってセンサーに写ります。
これが「ボケる」ということで、上で書いた「一定の幅」というのがボケ量になります。
では、赤いロウソクにピントを合わせるときはどうするのか?
図4のような感じで、レンズが動いてピントが合う位置を変えます。
一眼レフ用のレンズだとピントが合う位置を変えるときにピントリングがクルクル回ると思いますが(最近のは回らないタイプもあります)、ピントリングを回すことによってレンズが動いて、ピント合わせをしています。
絞りを絞るとなぜボケが少なくなるのか?
図4までは「絞り」を書いていませんでした。
絞りを書いてみると図5のようになります。
ロウソクの光が通れる道が狭まりました。
文字ではうまくかけませんが、図5で絞りを置くと絞りがないときに比べてボケ量が小さくなるのが伝わりますでしょうか?
絞りをどんどん絞っていくとボケ量が少なくなっていき、結像する位置から離れていてもピントが合っているかのように見えてきます。
この、ピントが合って見える範囲のことを「被写界深度」と言ったりします。
絞りを絞るとその分、センサーに到達する光の量は減るので、写真は暗く写ります。
ですから、それを補うためにシャッタースピードを遅くしたり、ISO感度を上げたりする必要があります。
逆に、絞りを開けると明るく写ります。
よく、「F値が小さいレンズは明るくてボケやすい」と言いますが、このF値は
F値 = 焦点距離 / 絞りの径
のことなので、焦点距離が同じならば、絞り径が大きくなるとF値は小さくなります。
少し余談になりますが、通称「サンニッパ」なんて呼ばれる、焦点距離が300mmでF値が2.8のレンズがあります。
これを上の式に当てはめて絞り径を計算するとなんと「107.1mm」にもなります。
実際のレンズは何枚も組み合わせて焦点距離を300mmにしてるので、そのままの絞り径にはなりませんが、焦点距離が長くてF値が小さいレンズは大きく、重く、高くなってしまいます。
(ちなみにNikonのサンニッパだと50万円以上もします)
望遠レンズだとボケ量が大きくなるのはなぜ?
絞りの次は焦点距離とボケ量の関係についてです。
図3の焦点の位置を白抜きのマルで表示しています。
図6では焦点距離を長くしました。つまり望遠側になってます。
そうすると、レンズとセンサーの距離も長くなります。
これまでと同様に、青いロウソクと赤いロウソクの光が通る道を書いてみます。
ピントが合っている青いロウソクは、図3と比べて像が大きくなっています。
そして、ピントが合っていない赤いロウソクのボケ量は大きくなることがわかりますでしょうか?
(被写体側の赤いロウソクと青いロウソクの距離は図3と同じです)
こんな感じで、焦点距離が長いとレンズとセンサーの距離も離れていき、赤いロウソクの結像する位置と、センサーの距離も離れていくので、ボケる幅が広がっていきます。
センサーサイズが大きいとボケ量が大きくなる?
「フルサイズだとセンサーが大きいから、たくさんボカせる」というのを聞いたことがないでしょうか?
これまでの話を理解すると「なんでセンサーが大きくなるとボケが大きくなるんだ?変わらないんじゃないの」という疑問がわくと思います。
そしてそれは合ってます。
でもフルサイズの方がボケが大きいというのも合ってます。
どういうことか?を下の図で説明すると、
こんな感じで、上の話では「被写体の大きさを同じに写そうとすると」という前提が抜けているから疑問が生じます。
ですから正しい言い方をすると「フルサイズだと被写体を同じ大きさに写そうとした時に、焦点距離が長いレンズを使えるから、ボケが大きくなる」となります。
逆に言うと、APS-Cサイズのカメラで撮った写真と同じ焦点距離のレンズを使って、フルサイズのカメラで写真を撮って、トリミングしてAPS-Cと同じ画像サイズにしたらボケ量は同じになります。
かなり長くなってしまいましたが、この辺の話がわかっていると写真の表現の幅も広がると思いますので、ステップアップのお役に立てれば幸いです。