【機械設計の話】材料力学は「魚肉ソーセージ」でイメージしよう
機械設計をやるなら材料力学は必須中の必須
苦手意識がある人は数式から離れて「構造体の変形」をイメージするところから始めよう
- この記事は機械工学を勉強している学生さんや、なんとなく設計という仕事に興味があるという人に向けて書いているつもりです。
- 自分が学生の時に気づけなかったことを中心に書いていきます。
- 勉強していることが仕事でどう使われるのかや、会社での仕事の実際を伝えたいと思います。
機械系専攻の人なら材料力学はほぼ必修科目になってると思います。
実際の機械設計の仕事でも、材料力学がわからないとお話になりません。
と、あえて強めのトーンで書かせてもらったのは本当にそうだから。
でも、私が学生だったときにはかなりの割合で単位を落として再履修してる人がいましたし、今も苦手に感じてる学生さんも多いと思います。
機械系にとって必須の材料力学を苦手にしている人がこんなに多いのはなぜなのか?
そしてその苦手意識をほぐす手助けをできるとすれば何があるか?
それがこの記事のタイトルに書いた「魚肉ソーセージ」だという結論に達しました。
これはほとんど賭けです。
意味不明だったらゴメンナサイ。
材料力学のどこでつまずいてしまうのか?
これは私の勝手な想像ですが、大学の教科書として買わされる本は、のっけから数式がバンバン出てきて、それに沿って講義が進むからじゃないかと思ってます。
大学って基本的には研究機関であって必ずしも教育機関ではないので、理論先行で話が進んでいきます。
だから、理解できない上に受け身で話を聞いていると、ついていけずに置いていかれる一方になる可能性があります。(私のことです)
で、数式が何を表しているのかわからないまま試験を迎えてThe End.
数学が得意で、数式から現象をイメージできる頭の良い人は問題ないかもしれませんが、そうじゃない人はまず現象を先にイメージできる工夫が必要なんじゃないか?と考えました。
私も最初は「鉄が変形する」ということが想像できてなかったので苦労しました。
でも「物体に力が加わるとどう変形するのか?」をイメージできるようになったら、数式の意味もだんだんわかるようになってきました。
そこで今回、「魚肉ソーセージ」で「梁のたわみ」を再現してみようと思います。
梁に荷重を加えるとどう変形するか?
早速ですが、材料力学の教科書に載ってそうな梁の曲げの問題について、魚肉ソーセージとからめてみましょう。
図の左側が教科書に出てくるような表現。
右側が一般的な感覚の表現になります。
ここでは魚肉ソーセージを使っていますが、金属材料でもだいたい同じようなことが起きています。(変形量が少ないのでイメージしづらいですが)
左側に書いてあることがよくわからないという人でも、右側の図なら感覚的に理解できると思います。
ソーセージの真ん中が一番曲がり方が急(曲率半径が小さい)で、このまま力を加え続けたらそこから折れるだろうと。
緩やかに曲げるより急に曲げた方が折れやすいというのは、なんとなくわかりますよね。
折れるということは応力が高いということです。
ところで、左側の一番下に書いた数式に目をやると、曲率半径と曲げモーメントの関係が表されています。
この式がどうやって出てくるのかは後で頑張って教科書を読んでみてもらいたいですが、この式では「曲げモーメントが大きいと、曲率半径が小さくなる」ということを表しています。
先ほどの魚肉ソーセージの話と合わせて考えてみると、「応力と曲げモーメントは関係あるんじゃないの?」ってことになります。
大学の講義では、
梁に力を加える → 梁にせん断力が発生する → 梁にモーメントも発生する → それにより応力が発生する
という順番に、数式を使って「原因から結果」の順に話が進んでいきます。
でも、数式が苦手だったり、「そもそもせん断力やモーメントってどういうこと?」というのを理解しきれないまま先に進むと、わけがわからなくなります。
そういう場合は、「ソーセージに力を加えて曲げたら折れる」という、感覚的にわかりやすい「結果」の方から攻めてく方が理解しやすいこともあるんじゃないでしょうか。
もう一つ、片持ち梁でやってみます。
材料力学がわからなくても、ソーセージがどこから折れるかはわかりますよね。
ここでは細かいことひとつひとつを解説することが目的ではないのでいろいろ省きますが、数式がわかりにくいときは、感覚的にわかりやすい現象の結果からイメージして理解を進めていく、ということもやってみてください。
せっかくなので他にもやってみました
一応注意書きをしておきますと、金属材料とソーセージの特性は同じではないので、参考程度に考えてください。
あくまで変形を拡大して見ることによってイメージしやすくするという狙いです。
教科書でよく見る図の魚肉ソーセージ版です。
ねじり
柱の座屈
応力集中
引張り試験
最後はスタッフがおいしくいただきました。
魚肉ソーセージの表面を焦がして、ウスターソースをかけて食べるのが好きです。
材料力学とシミュレーション
材料力学では数式を理解することも大事ですが、実際の機械設計の仕事という観点では、物体の変形を正しくイメージできることの方がもっと大事だと私は思ってます。
まじめな人からお叱りを頂きそうなことをあえて書きます。
物体の応力や変形の数値はシミュレーション(CAE,FEM)で比較的簡単に計算できるようになってきました。
ですから、手計算で応力を出せなくても仕事はできます。
でもシミュレーションは正直なので、間違った条件を設定すると間違った結果が出てきます。
その間違いに気付けるかどうかは、材料力学に基づいた現象をちゃんと理解しているかどうかにかかってます。
普段から物体の変形のイメージを持つ習慣を付けていれば、「このシミュレーション結果はなんかおかしいんじゃないか?」というのに気付けるようになってきます。
間違いに気付けないで設計を進めて部品をつくって、試験してみたら壊れちゃった、ってなったら目も当てられないです。(そういう経験もある意味大事かもしれませんが)
材料力学ができないからといって将来の可能性を狭めないようするために、あまり難しく考えすぎずに勉強してみてください。