【機械設計実践】これまで整理してきた情報を元に、製品の構成を考えよう
要求機能を振り返り、一段掘り下げて、製品に必要な構成・形状の概略をポンチ絵で書いてみます
- この記事は機械工学を勉強している学生さんや、なんとなく設計という仕事に興味があるという人に向けて書いているつもりです。
- 自分が学生の時に気づけなかったことを中心に書いていきます。
- 勉強していることが仕事でどう使われるのかや、会社での仕事の実際を伝えたいと思います。
この記事は「コーヒー焙煎機」の設計を通して、製品設計の具体的な流れを疑似体験してもらうシリーズです。
シリーズ全体の目次もリンク先の記事にあります。
これまでの記事で機械設計の仕事はどんな感じのもんかというのを大まかに書いてきました。その中で、機械設計の仕事で考えなきゃいけないことは広範囲にわたるということと、量産製品設計の流れはなんとなく伝えられたかなと思います。この先のもうちょっと細かい話は概念的なことを書いていっても伝わりにくいと思うので、具体的な製品を設計していく過程でそれぞれの考え方、位置付けを書いていきます。
ついに製品の形を考えるところまできました。
とは言っても製品が出来上がるまではまだまだ遠い道のりです。
ここでは製品に必要な機能を達成するためにはどんな構成、形状にすれば良いのか考えます。
この時に作成するラフなスケッチレベルの図を「ポンチ絵」と言ったりします。
順序としては要求機能を洗い出したものからさらに一段掘り下げた要求を書き出して、そのために必要な部品をポンチ絵に盛り込んでいきます。
ですが、その順番に話を進めるとかえって分かりにくいような気がするので、ここでの説明は私がこうしようと思ってる製品構成を先に出してから、それぞれの掘り下げた要求を見てみようと思います。
焙煎機の方式決め
焙煎機の彼我比較のところで何種類かの既存の焙煎機を見てきました。
この中から、今回設計しようとしているものの条件に一番近い「UR-500」をベースに考えていきます。
これは一度に500gまでしか焙煎できないものなので、今回の目標である1kgできるようにしていきます。
また、このUR-500では業務用として考えた時に一部足りない機能があるので追加したり、耐久性を見直したりということをやっていく感じです。
このように、既存の競合製品に対して機能を追加したものを開発として製品の競争力を上げていくというのは、実際の開発でもよくあることです。
コーヒー焙煎について知識が無いとこの先の話がわからないと思いますので、このUR-500を使った焙煎作業の流れの動画を見てください。
今回設計する焙煎機のポンチ絵
さらっと書いちゃいましたが、ここの「要求機能を形にする」というプロセスが設計の仕事で一番楽しいとこだと思います。
(ここが終わるとあとはひたすら苦しい戦いが。。。)
ポンチ絵を書く時点では細かい部品や寸法を書くのではなく、まずは必要な機能を満足するための構成の概略を書くというレベルです。
ポンチ絵を書く時は手書きでもいいですし、それなりの規模の会社だと一人一台3D CADが使えて、そちらの方がやりやすいということであればいきなり3Dモデルを構築していってもいいです。
私は手書きがアイディアを直感的にどんどん書けるので手書きにしてますが、絵心は無いのでお見苦しく無いように今回はIllustratorで清書しました。
会社での仕事を想定すると、ポンチ絵レベルのところから上司のチェックが入ったりしますので、見た目がキレイになってた方が良いですね。
機械設計に限らず、サラリーマンはことあるごとにチェックを受けるので、資料作りに追われます。(というのは会社を辞める前の私のグチです)
それはさておき、この部品構成が必要であるという結論に至った「機能要求の掘り下げ」を次に見ていきます。
機能要求の掘り下げ
右の図は機能要求を洗い出す記事のところで整理したものです。
これだけでは製品の構成を考えていく上で大雑把すぎるので、もう一段掘り下げていきます。
今回は「焙煎ができること」という基本機能についてだけ話を進めていきます。
いかんせん私がコーヒー焙煎の素人で、設計を進めるうえで分からないことが多いです。
ですから、最初からあれもこれも機能を全部盛り込んでみて、試作品をつくって試験してみたら基本的な機能がそもそもNGだった、となってしまったら基本機能以外について検討した時間が無駄になってしまいます。
実際の製品設計でも「設計 → 試作 → 試験 → 設計・・・」というのを何回か繰り返して、徐々に製品を仕上げていって、最終的に量産できるところまで持っていきます。
(最近時は短期開発要求と開発費削減でこのサイクルを回す数が減っていく傾向ですが)
会社によって呼び方はいろいろあるかもしれませんが、このサイクルの一番最初から順に「機能試作」「製品試作」「量産試作」と言ったりして、各試作ごとに目的が変わっていきます。
話を戻して、今回の記事で想定しているのは「機能試作」にあたる部分と考え、まずは基本性能について考えました。
この記事を読んでくださっている皆さんは別にコーヒー焙煎に詳しくなりたいわけじゃないと思いますので、細かいところは読み飛ばしてもらって構いません。
ただ、要求を細分化していって、それに対応する部品を付けていき(下の図で青字で書きました)、最終的に一つの製品にまとめ上げるという流れを理解してください。
上で出したポンチ絵と見比べていただくと、要求と部品が対応しているのがわかると思います。
そしてこの先の詳細検討を視野に入れて、形状をちゃんと決めるために検討、検証しなければいけないことの代表例を赤字で書いています。
「焙煎ができること」という機能の掘り下げ
こんな感じですが、イメージは伝わりましたでしょうか?
実際の仕事では、既存の製品をちょこっと変更するだけだったりすると、この辺の作業をちゃんとやってないところもあるかもしれません。
簡単な部品だとこの作業をやってなくても上手くいっちゃうことの方が多いですが、今回私がコーヒー焙煎機を設計するように、未知の領域のものをやる場合にはそうはいきません。
また、会社の仕事では自分が設計した製品を一生面倒見続けることはできないですし、一人で開発しているわけでもないので、設計の考え方を記録に残しておくという意味でも、今回の作業は必要になってくると思います。
次回は基本諸元の検討をします。