【機械設計実践】焙煎機の基本諸元を検討しよう

製品全体を設計する元となる基本諸元を検討して、構想設計の章は締めたいと思います

  • この記事は機械工学を勉強している学生さんや、なんとなく設計という仕事に興味があるという人に向けて書いているつもりです。
  • 自分が学生の時に気づけなかったことを中心に書いていきます。
  • 勉強していることが仕事でどう使われるのかや、会社での仕事の実際を伝えたいと思います。

この記事は「コーヒー焙煎機」の設計を通して、製品設計の具体的な流れを疑似体験してもらうシリーズです。

シリーズ全体の目次もリンク先の記事にあります。

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【機械設計実践】コーヒー焙煎機を設計する

これまでの記事で機械設計の仕事はどんな感じのもんかというのを大まかに書いてきました。その中で、機械設計の仕事で考えなきゃいけないことは広範囲にわたるということと、量産製品設計の流れはなんとなく伝えられたかなと思います。この先のもうちょっと細かい話は概念的なことを書いていっても伝わりにくいと思うので、具体的な製品を設計していく過程でそれぞれの考え方、位置付けを書いていきます。

https://poli-studio.com/2015/10/31/1716/(脱サラはじめました)

構想設計の章の最後に基本諸元を決めて、その後の詳細検討につなげます。

正直なところ、基本諸元の検討を構想設計の範囲に含めるかどうかは微妙なところですが、これを決めないことには先に進まない事情もあるので、この記事ではこの構成とさせていただきました。

製品によって基本諸元を何にするかは変わってきます。

車で言えば性能を決める基本となるエンジン特性、ホイールベース、タイヤ径、などなどいろいろありますが、製品の骨格を決めるパラメータと言ってもいいかもしれません。

今回のコーヒー焙煎機で言うと、なんと言ってもドラムのサイズを決めないことにはどうしようもありません。

(焙煎機の構造については前回の記事をご参照ください)

drum_1

それをどう決めるかのノウハウが現時点で私の手元には全くありません。

片っ端からいろんなサイズのドラムを作って試験してみるという手も無くはないですが、それはさすがにエンジニアらしくないので、とりあえずの理屈をつけて一旦決めてみます。

これから書く理屈が合ってるかもしれないし、間違ってるかもしれません。

間違ってたとしても、考えを持ってやってみた失敗なら次に改善の方向性が立てやすいです。

そして試作用の部品をつくるのにもお金がかかるので、会社での仕事では上司の承認が必要で、その試作に意義があることを説明しないといけません。

そういった観点からもノーガードではなく、情報が無いなりに仮説を立てて検討してみます。

ドラムのサイズを何で決めるか?

焙煎ではコーヒー豆になるべくムラなく熱が入るようにしないといけなさそうです。

ですから、ドラム内でコーヒー豆が何層にも積み重なるような状態になるとまずいような気がします。

豆が広がれるように、ドラムをある程度大きくしたいですが、どこまで大きくすれば良いか?

今回の目標は1kgの豆を1度に焙煎することです。

そこで1kg分の豆を重ならないようにテーブルの上に広げてみました。

その面積は0.33m^2

これと上のドラムの模式図の青く塗っている部分の表面積が同じになることを狙って、ドラムの径と長さを決めたいと思います。

計算してみた結果、ドラム径を0.3m、長さを0.35mにするとちょうど合ったので、スタート仕様はこれで行きます。

ドラムの回転数をいくつに設定するか?

こちらもモーター選定に関わってくるので、今の段階で検討しておきます。

回転数の設定についても全くノウハウが無いので、「なるべくきれいに豆を攪拌させる」という観点で以下のように考えました。

drum_2

この図の左側のように、なるべく遠くに飛んでもらいたいですが、そうなる回転数はいくつか?

図の右側のような力の釣り合いの式を立てて、コーヒー豆がドラムから離れて飛んでいく軌道を計算してみます。

これは広い意味では機械力学の範囲になるんでしょうか。(高校の物理レベルかもしれませんが)

軌道の計算結果が下の図です。

drum_3

ドラムの回転数ごとに軌道を計算しました。

これを見ると、回転数が50rpmだと全然飛んでいかず、うまく攪拌できなさそうです。

回転数が70rpmだと遠くに飛んでますが、豆がドラムの上の方まで上がっていて、上側の方が恐らく温度が低いので、均一に熱が入らなくなるかもしれません。

そう考えると60〜65rpmくらいがバランスが取れそうな気がします。

これが正しいかどうかは今後の試験で検証していきます。

 

かなりラフな説明になりましたが、今回は基本諸元を代表してドラムのサイズと回転数の検討を例に挙げてみました。

ここの検討の精度が高いほど、後々の開発が楽になってきますので、手持ちの情報を駆使して検討していきましょう。

逆に、新しい製品の開発は参考にできる情報が無いので難しいものになるとも言えます。

でもやっぱり新しいものをやる方が楽しいですけどね。

次回からは詳細検討の章に入っていきます。